現在餃子とワインの店・熟成肉の店を手掛ける跡部氏の飲食人生は、意外にも寿司屋から始まっていた。専門学校卒業後、寿司が好きで寿司店へ入店。その後割烹料理店など含めて10年ほど板前として活躍した。
板前時代には腕に自信があった跡部氏だが、包丁を離した時、PC操作・事業計画など、初めて自分の出来ないことの多さに驚いた。その後、コンサルティング会社などを経て、たまたま友人に紹介された物件で「餃子焼専門店 立吉(現在の店の前身)」を立ち上げた。
この頃、経営やビジネスに関する知識は持ち合わせていたが、なかなか思うような売上ではなかった。月々多額の返済に追われ、もうだめだと思った時、跡部氏の目は不思議とお客様ではなく従業員に向いていた。立吉の売上が伸びたのはそこからだ。開店当初平均230万程度だった売上が、最高580万円まで伸びた。
この時変わったことと言えば、恐らく従業員の意識だろう。従業員は跡部氏の言葉を受け、お客様に愛される従業員を目指した。
跡部氏の従業員教育は激しいツンデレだ。「お前はお客様に何が与えられるか?与えられるものがないなら帰れ!」こんな言葉を浴びせられた従業員は、やはり離れていく者も多かった。しかし、この言葉の裏に込めた想いは熱い。「ここで働くことが目的ではダメだ。何を求めて働くのか?」このようなことを跡部氏は問いかける。
跡部氏の言葉の裏には必ず「誰かのため」が含まれている。「肉を学びに働きに来るのではなく、家族の生活を豊かにするために働くんだ」 「お前のミスであの客が来なくなっても良い。だがお客が来なくなって売上が減ったら、仲間の給料が減るだろう!」こうした言葉で従業員は一人一人が強くなり、自立をし、結果として組織が強くなっていく。
跡部氏にとっては、餃子や熟成肉は稼ぐためのツールであり、店舗は手段。だが、やはり元々の職人気質からか餃子や熟成肉の開発は研究そのもの。今後については、店舗展開はやりたいスタッフがいれば・・・ということだが、跡部氏自身は熟成肉を世界一にするために戦略を立て、進めている。
従業員がお客様に愛される。自分はそんな従業員に格好良いと思われる、光を放つ存在で居続けなくてはならない。昔感じた板長への想いに近いかもしれない。しかし、今はそれを超えたと自信を持って言える。光り続けるために、跡部氏はいつも全力だ。
「スイッチをONにしたら、スイッチをOFFに出来ないようにぶっ壊せ。」これから開業するなら、どんなことがあっても諦めるな、必ず答えはそこにある。やるんならやれ!有言実行出来る奴だけが勝てる。この厳しい言葉の裏にも、負けて欲しくないという優しさが感じられた。