宮﨑氏とインドにつながりが出来たのは、今から数十年前。
旅行会社に10年勤めていた時、添乗員の仕事でインドを訪問したことがきっかけだった。
元々喫茶店で独立開業しようと考えていたが、当時単価の安いチェーンのコーヒー店が
増えたため考え直し、「素人開業するならお客様の前で料理するよりも、
仕込みに比重が大きいカレーが向いているのでは?」
と考え、そこで本場のインドで食べた美味しいインドカレーが結びついた。
当時は夫婦二人で開業するのに、到底銀座など物件の貸し手は見つからなかったが、
たまたまビール会社とお付き合いのある不動産屋さんが一号店となる銀座の物件を見つけ、
ついに開業に向かって進むこととなった。
開業するにあたっては、奥様が3年間インド料理の研究家に弟子入りし、さらに宮﨑氏自身も
1年間赤坂にあるインド料理店の店長として経験を積んだ。
そのインド料理店で出会ったインド人コックの友人を一人日本に呼び、
宮﨑氏自身も調理をしながら、夫婦で一号店をオープンした。
インドから連れてきたシェフのため、この店の開業のためにインド料理を数年かけて
学んでくれた妻のため、開業後はひたすら寝る時間を削り、働いた。
慣れない仕込み作業に時間がかかり忙しい毎日だったが、それでも楽しかったという。
一店舗目が口コミでお客様も定着して安定してきた頃、インドにある他のメニューを
紹介して楽しみたいという気持ちで、異なるコンセプトの二号店を開店した。
現在繁盛店3店を経営する宮﨑氏に今後の展望を伺うと「味・雰囲気・サービスなど、
自分の納得できるレベルを維持管理して行くには、自分には3店舗が限界」と、
3店舗以上は増やさないつもりとのこと。
宮﨑氏が経営する3店では独立開業希望者も働きに来ることがあり、
「開業したい!というやる気のある人と働くのは楽しい」と語っていた。
店には特に隠し事もなく、学びたい気持ちがあればレシピなど何でも教えるという。
「お店では料理だけではなく、接客やお客様とのつながりなど、
様々なことを学んで欲しい。レシピを持ち逃げされても構わないが、
そんな縁を大切に出来ない人は商売が上手く行くわけがない。」
このように語る宮﨑氏は経営者の仕事についても語ってくれた。
「価値の創造と分配」
「経営者の仕事とは、価値を作ること。新しい価値を作れば、
お客様はお金や笑顔を返してくれるので、それをこの店に関わる全ての人と分配する。」
驚いたことに、この“分配”については業者さんにもWinであって欲しいという想いから、
値段が極端に高い時以外は仕入れ先に値段交渉したことが無いという。
最後に、これから開業を希望する人に向けてこのようにメッセージを送ってくれた。
「自営業者の商売はライフスタイル。
どうなりたいかよりも、どのような存在でありたいか。
自分にとって何が幸せかを考え、商売のイメージと結び付ければ良い。
お金だけのためや、主になりたいという考えだけではそれを達成した時に
飽きてしまって続けられないと思います。」
宮﨑氏にとっては繁盛することがゴールなのではなく、その先にある
自分の幸せや関わる人達の幸せがゴールのようだ。