四季折々の変化に富み、豊かな自然に包まれた世羅台地に創業して40年。もともとは父親がはじめたパン屋だったが、自分が後を継いだときに時代の波に乗り洋菓子店としてリニューアルオープンした。
子どもの頃、親に連れられ街で食べた、生クリームの味、フルーツがのった鮮やかなケーキのことは、鮮明に覚えており、その頃から洋菓子店へ憧れがあった。
地元の高校を卒業後に東京へ。昼間は洋菓子店で働き、夜は、その当時、珍しかった製菓学校に通いながら4年半の修行をした。広島市内の洋菓子店に勤めた後、実家に戻り若干24歳で洋菓子店として創業した。
開業したときは、経営に関することは何も分からず、どんぶり勘定だったが、徐々にお店を軌道に乗せ、オーブンや冷蔵庫など必要な機材も導入していった。
当時は生クリームが珍しく多くのケーキは、日持ちするバタクリームだった。
田舎の人は、生クリームのことをよく知らず、買ったケーキをそのまま仏壇に供えることもあり、生クリームの味がおかしいと言うお客さんもいたそうだ。
地元、世羅の食材を中心に季節感溢れる洋菓子作りを心がけた。和洋折衷を融合させた「焼き大福」はクリーム、もちのようにモチモチとふわふわの新感覚スイーツだ。お土産で人気のレーズンサンドには大粒なピオーネを、レモンピールサンドには瀬戸田のレモンピールをふんだんに使い、道の駅などのお客さまにも好評だ。地元の高校とコラボレーションして生まれた、せら茶とバターケーキ「せらケーキ」は、平成3年中国五県商工会村おこし物産展にて奨励賞を受賞した。さらに平成6年中国五県商工会村おこし物産展では「世羅なしコンポート」、平成8年中国五県商工会村おこし物産展では「せらの太陽花サブレ」が最も優れた樹を受賞している。
繁盛継続の秘訣は「継続は力なり」。そして、安心・安全や美味しさを常にお客さまに伝えること、お客さまを決して裏切ることなく、やってきたこと、できたことに感謝することだと言い切る。
さらに常に大切にしている言葉に「初心忘るべからず」がある。壁にぶつかったり、道に迷ったときは、初心、つまり自分が未熟だった頃のことを思い返すというのも一つの方法だ。おごり高ぶったり、油断したりする気持ちを戒め、謙虚な気持ちで道を選ぶことができると、これから開業される方にも熱いエールを贈る。