名古屋市の閑静な住宅街の一角に料理教室を始めて30年。
22歳の時、結婚を機に料理教室を開講した。「料理の勉強がしたい」と話す母の知人を紹介してもらい、当初は3名の生徒が教室に足を運んだ。始めたころは小さな規模だったが、次第に南方氏の人柄、料理に対しての想いに共感する生徒が増え、口コミや紹介で、今では総勢500名以上の生徒が在籍する料理教室となった。
南方氏は、常日頃生み出すレシピや料理のコンセプトが『愛情のある手抜き料理』であることを教えてくれた。続けて、「決して本当の意味で手を抜いているわけではない。子育てをしていた頃の自分のように、日々忙しさの中にあっても、子どもたちに最大限おいしい料理を食べて欲しいと願うお母さんたちの助けになれたら」と話してくれた。
自身が、女手一つで子供を育ててきた経験。なにがなんでも自分が働かないといけない環境の中で、それでも子供たちにはしっかり愛情を伝えていきたい。試行錯誤を繰り返した末にカタチとなったものが、現在子育て真っ最中の働くお母さんの強い味方になっている。
料理教室の運営やレシピ開発にとどまらず、専門学校の講師や地域誌の料理ページ連載を担当するなど、多方面で活躍する南方氏は、新たに『オンラインでは感じられないヒトの温もりを感じられる弁当』というコンセプトを持ったテイクアウト専門店の開業を控えている。
IT技術が発達し、人と人との繋がりが希薄になってきた時代だからこそ、人の五感や、心と心の繋がりに重きを置き、お客様に持ち前の『愛情』を伝えていくようだ。
最後に、これから開業を希望する人に向けてメッセージを送ってくれた。
「どのような状況、時代になっても心と心の繋がりを大事にすること。愛情を伝えられれば、その愛情はいずれ返ってくる。仕事に情熱を持ち、初心を忘れず、驕らず、嘘がない仕事をすること」
このように話す南方氏の姿に、私もどこか母親の面影を見た。