戦後学童疎開から帰って来た時は、東京一面が焼け野原で何もない状態だったという。当時はとにかく生きて行くために働くという状況の中、結婚して肉屋に嫁いだのをきっかけに肉の扱いを学びながら商売のやり方を学んできたという。
以来飲食店を16年前に始める前まで、40年以上食肉加工工場と店舗を持ち精肉業を営んできたという。「肉屋に嫁いだ当時は、女性は店頭でてんぷらやコロッケなどもっぱら販売する方で、肉をさばく仕事は男性の仕事でした。ただ本当に自分が好きだったので、まずは見よう見まねでさばき方を練習し、教えてもらって肉の扱いを身につけました。」「飲食店を始めるきっかけは、長年精肉店で長時間働いてきたため、無理がたたり医者に止められ、精肉店での仕事が出来なくなった時に、体に負担がそれほどなく肉を扱える仕事を続けたいと考えたのが始まりです。」そう松澤氏はいう。
精肉店を営んでいた富士見台で1999年「ステーキ茶屋 下町っ子」を開業した。看板メニューは、神戸牛のランプステーキだ。精肉店を営んでいたころから繋がりのある和牛牧場から最高品質の和牛のランプ肉を仕入れている。仕入れた塊肉を筋の流れを見極めて、丁寧にさばき一定の温度管理の中で、一番美味しいタイミングになるまで熟成させるという。「今はテレビなどでも熟成肉のブームになっていますが、本当の和牛肉の味をわかって出しているところは少ないように思います。肉の品質も同じ和牛でも個体によって差があります。それぞれの一番美味しく食べられるタイミングを見極め召し上がって頂いてます。」そう松澤氏は語る。
ごまかしなく本物の和牛の美味しさを感じてもらえるように、塩胡椒でシンプルに食べて頂くのがこだわりだ。本当の和牛の美味しさを求め、海外からわざわざやってくるお客様もいるという。「和牛は世界に誇れる食材です。本当の美味しさをもっと多くの人に知ってもらいたい。ごまかしのない良い素材を追求し和牛肉の美味しさを次の世代に伝えて行く。それが精肉業をやって来た頃からの想いです。」今後も本物の和牛の味を伝えて行きたいとのことだ。