佐藤氏は、地元で調理学校を卒業し、都内の寿司の名店で16年間修業を積み、36歳で『西麻布鮨いち』を開業した。
『20歳で鮨の修業に入ったころから、漠然と独立開業をしたいという想いは持っていましたが、具体的に考え始めたのは35歳になったころからでした。40歳という年齢のふしめが見えるようになった時に、自分自身がどういう立ち位置で何をしたいのか、真剣に考えはじめたのが始まりでした。』そう佐藤氏は振り返る。
『今振り返ると、修業時代は厳しくつらいこともありました。こんなんじゃやっていられないと逃げたくなることもありましたが、今経営者となってみてわかるのは、我慢する時期も必要だったなということです。目をそらさずに受け止めていくことで、後々経営者となった時に、修業時代に親方の言っていたことが理解できるようになりました。』そう佐藤氏は語る。
開業時には、自身が20代の修業時代から店が変わっても通い続けてくれた、一番長くお付き合いのある常連のお客様を、一番初めのお客様として招待したという。
『開業してしばらくは、今までのお客様のご予約で忙しい時期がありましたが、その後はしばらく苦しい時期がありました。開業して1年くらいは様々な販促媒体を試してみたりしましたが、今は本当に必要なことのみを見極めて絞っています。』お客様との距離感を大事にし、新規のお客様には、必ずご挨拶をし名刺交換をしてくれたお客様には、その日の内にお礼のメールを送ることを徹底しているという。
『お客様がどのような利用で、お店を使って頂いているのかをしっかりと把握しながら、
、常連客を大切にしていきたいと考えています。』
どのようなお客様にどう楽しんでもらいたいか、自分の変わらない信念を持ち長く続けるために、原点に立ち返り、長く応援して頂ける常連客を大切にすることで、今は常連客が8割新規2割のお客様も常連客からの口コミで来店いただけるようになり、売上も安定してきているとのこと。
『今後は、鮨という日本の技術・日本の食文化を守りながら、お客様をおもてなしし、さらに発信をしていきたいと考えています。店舗展開というよりは、今まで育ててもらった鮨業界への恩返しという意味でも、同じように業界に入ってくる若手を育てて行きたいと考えています。』佐藤氏は、さらに次の目標に向けて、挑戦をし続けていきたいとのことだ。