創業は大正15年(1926年)。現在の三代目豊田氏の祖母が、関東大震災後混乱の中避難している人々に釜を使って炊き出しをしたのがはじまりだという。「美味しいご飯をできたてで食べて頂きたい!」そんな想いから誕生したのが、一人前の御飯を具材と共に釜で炊き提供する「釜めし」だという。当時は1人前を炊ける釜など当然なかった頃、初代が釜の大きさや底の高さなど試行錯誤を繰り返し、1人前の釜を職人に作らせ提供するようになった。
その当時どこにもなかった商品は話題を呼び、店名も「釜めし」とのみうちだして営業していたとのことだ。元祖と呼ばれる所以である。戦後浅草で新たに店を構えた当時は、復興のために「釜めし」を他の飲食店にも快く提供し、浅草周辺に広め他の飲食店と力を合わせ活気を呼び戻したという。現在でも浅草周辺では、釜めしをメニューとして出す店が多いのはそんな歴史があるからだ。
「『釜めし 春』の釜めしは、米を吟味することからはじまる。炊きあがりが水っぽくならず少し甘めの良質な国産米を毎年厳選して使用する。大正時代から変わらない醤油・日本酒・みりんで作る特製たれと具材から染み出る旨みで、味わいを出すのだという。
代々受け継がれてきた、老舗の変わらない味を求めて、親子3代にわたって通い続ける常連客も数多いとのこと。お正月は特に1年の中でも繁忙期を迎える、家族で釜めしを楽しみに毎年遠方からやってくるお客様もいるということだ。
現在は三代目豊田氏から、四代目に代替わりを進めているという、今後も家族経営で浅草本店と上野店で老舗の味を守り続けて行く。