子供時代、体が弱かった父に代わって母が働きに出ていたため、晩御飯の支度は兄と二人で協力して行った。しかし、自分が作った料理が特に家族の評判が良く、その時、自分の料理好きに気づいたそうだ。また、人を笑顔にできる「食」の魅力を実感し、ゆくゆくは料理の道に入りたいと思っていたとの事。
高校卒業後、ご縁あって、箱根の老舗ホテルに就職。そこで11年お世話になり、一通り仕事を覚えた。元々、いつか独立したい、自分のお店を持ちたいと思っていたので、その夢を実現するために、勤めていたホテルをやめ、結婚というきっかけもあって名古屋に。そこで、名古屋で指折りの割烹料理店の板長と知り合うきっかけがあり、そのお店で二番(副料理長)として5年間、さらに腕を磨いて、平成7年に開業。
高級割烹としてスタートしたので、開業当時は、食材にもお金をかけ、人もたくさん雇っていた。そこそこお客さんは入るのだが、人件費を筆頭に何せ出ていくお金も大きく、苦戦続きだったそうだ。3-4か月で運転資金が底をつき、リストラやお店の方向性を変え、家族だけで再スタートして、何とか利益が出るようになったのだという。
当時は本当に毎日不安で辛かったが、来てくださっているお客さんの「美味しかったよ。また来るよ。」という声に支えられ、続けられたと、ご主人はしみじみ語った。
ご主人の目指す料理、例えば肉じゃがとか、ひじきの煮物といった、スタンダードな料理の最高峰を目指している。ずっと残っていく定番料理を確立したいと考えているそうだ。
盛り付けや見た目についても、「わぁ、美味しそう!箸がつけられない」というのは最高じゃない。「わぁ。美味しそう!」で思わず箸をつけてしまうのが最高なのだという。
お店の看板メニューとしては、季節のもの旬の物を使った、ひとひねりした料理。例えば初夏ならトマトを使った和の料理を出すとか、カツオの塩辛を使ったチーズとか。勝負は突き出しだと思っているので、最初でガツンと行く事を意識しているのだそうだ。
お店が継続してこられたのは、「人と人とのつながり、人への感謝があったからだと思う。いくら料理が上手でも、評判になっても、決しておごってはいけない、お客さんにどれだけ感謝があるか。」だと考えているそうだ。
今後の展開については、いい物件があればいつでも動く準備や気持ちはあるとの事。また、志を同じくする人と出会えれば、二号店、新しい業態なども考えてみたいそうだ。
座右の銘は「食は命」。食事というのは、命をつなぐため、すごく大切なもの。そういう気持ちで日々料理づくりに取り組んでいるのだという。
後輩経営者へは、初心を忘れないで、夢を貫き通してほしい。そして、志を高く持ってほしい。(志の高い人には志の高い人が集まってくるので)とエールを贈る。