創業は昭和5年、初代の画号の『井泉(セイセン)』が店の名前の由来だという。創業当時は、西洋から入ってきたカツレツを日本人好みに改良し油で揚げた『とんかつ』を出す店が流行りはじめた時代だった。井泉は「お座敷洋食の店」として地域に愛されるようになったのだという。創業当時に初代が当時のかたい肉を何とかお客様に美味しく食べてもらえるように工夫し考案したのが、『お箸できれるやわらかいとんかつ』だったという。
肉質を柔らかくするための独自の工夫された調理法と最高級の油を使い、パン粉も店の特注で業者から仕入れているという。こだわりの店の味に惚れ込み親子の代に渡って常連となってくれているお客様も多いという。
名物のカツサンドが誕生したのは、初代女将がトーストと紅茶の朝食という、当時時代の最先端を取り入れた生活をしていた時、ふと身近にあるパンでこのとんかつを挟み、お稲荷さんや海苔巻のように手軽に食べれるようにしたらどうかと考えたのがはじまりという。カツサンド発祥の店となった由来だ。手軽に食べられる、カツサンドは当時お客様の中心だった下谷花柳界の芸者衆に大好評となり広まったという。
初代が考案した「お箸できれるやわらかいとんかつ」と「カツサンド」は代々その味が受け継がれ、現在は三代目石坂氏とその娘にあたる四代目が店の味を守っている。
「毎日一生懸命、仕事をきちんとやる。それが大事です。お店には若い人からご高齢の方まで幅広く来て頂いている。家族で来ても楽しんで食べて頂けるように、受け継いできた味はもちろん価格や店の雰囲気も変えずに残して行きたい。」「井泉の味を求めて来て頂いているお客様の期待に添う事が出来るように、今後もこの味を受け継いで守っていきたい。それが私の使命と感じています。」そう四代目は語る。今後も老舗の味は代々受け継がれていく。