上野の精養軒で修業した初代が、御徒町で創業したのが昭和11年から12年頃。名物の「焼かつ」とは、明治時代ごろヨーロッパから日本に伝わってきた「カツレツ」をもとに初代が素材・味・調理法に工夫を重ね店の看板商品にしたのがはじまりだ。
戦後浅草に移転し、今は3代目が老舗の味を守り店を切り盛りしている。
「良い素材や調理方法にこだわれば、やはり原価も手間もかかります。効率的ではないかもしれないが、やはりこの味を美味しいと言ってくれるお客様の為に続けていきたい。」そう三代目店主の長谷川氏は語る。
名物の焼かつは、「あっさり・さっぱりと美味しく食べれる。」と年配のお客様にも非常に好評だ。油に落として揚げる一般的な「とんかつ」とは違い、1枚1枚常に新しい上質の油を用いフライパンで丁寧に調理する事で、油がしつこくなく衣がさっくりと仕上がり、美味しく食べて頂く事が出来るのだという。
トンカツソースも厳選し、皇室御用達とされた「プリンスソース」を使用している。そんなこだわりの「焼かつ」にほれこみ、親子3代で通っている常連客も多いという。けして目立つ場所にあるわけではない路地裏の店だが、ランチタイムは満席となる。
それでも長谷川氏は、「飲食店の経営は決して甘いものではない。」という。食材価格が上がる中で、お得だと感じて頂く値段で出すために厳しい状況も乗り越えて工夫を続けて行く必要があるからだ。また「手間を惜しんでは、美味しい物は提供できない。」と創業当初から受け継がれた調理方法にこだわり今後も店の味を守り続けていく。